「ウチの商品は良いモノなのに、なぜかネットでは売れない」という悩みを持つ経営者は少なくありません。
特にアパレルや化粧品など、実際に試さなければ使用感やフィット感がわかりにくい商品は、購入率が伸び悩むことが多いです。
これらの課題を劇的に解決する存在として、ライブコマースが注目されています。
ライブコマースというと、美人やイケメンのインフルエンサーがリアルタイムに商品をお薦めすることで、そのファンが買うという構図をイメージするかもしれません。
しかし、実際のところは必ずしも、美人やイケメンを起用する必要はありません。
むしろ商品の特性によっては、そうしたインフルエンサーは逆効果にさえなります。
ライブコマースの本質的な価値
そもそもなぜ消費者はライブコマースでモノを買うのでしょうか?
その本質的な理由は、「不確実性の削減」と「価値観の共有」にあります。
消費者は商品を購入する際、商品が自分に合うかどうかという不確実性を感じています。
また、販売者が信頼できる存在であるかどうかという不安も抱きがちです。
しかし、配信者が自ら商品を試し、消費者と価値観を共有することで、こうした不確実性や不安は取り払うことができます。
つまり、ライブコマースの本質は、配信者という媒介を通じて「商品への確信」と「販売者への信頼」を同時に高める点なのです。
消費者が重視する2つのポイント
消費者がなぜライブコマースで買い物をするのか調べた、南京大学のベンジャン・ルー助教らの調査があります。
この調査では過去3日以内にライブコマースで買い物をしたことのある約500人に対し、何を重視しているかを聞き取りました。
そこからまず分かったことは、配信者と消費者の身体的特徴の類似性が高いほど、消費者は「この商品は自分にも合うだろう」と感じやすくなることです。
例えば、体型が似ている配信者が試着することで、「自分も同じように着こなせる」と想起でき、「自分には似合わないかも」という不安が大きく低下します。
また、配信者と消費者の価値観の類似性が高い場合、配信者への信頼が有意に高まることも示されました。
配信者が自身の考えやライフスタイルを語り、それが消費者と一致すると、「この人が勧める商品なら信頼できる」と感じる傾向が強くなるのです。
この調査から何が言えるかというと、配信者が「美人かどうか」より「外見や価値観が似ているかどうか」のほうがライブコマースの成功には重要ということです。
小売企業が取るべき戦略
以上のことから、小売企業がライブコマースをインフルエンサーに依頼するときには、次のポイントに注意する必要があるといえます。
1.インフルエンサーの選定方法
配信者選定においては「ブランドイメージに合う」だけではなく、ターゲット顧客と身体的特徴が近い人材を起用することが有効です。
Sサイズ中心のアパレルブランドであれば、細身の配信者を起用することで、消費者はより自己投影しやすくなります。同じサイズ帯の配信者を起用することで、「この服は自分にもこう映る」という安心感を持たせることができます。
2.配信で伝えるべきこと
配信内容においては価値観やライフスタイルを積極的に共有する構成が重要です。ただ商品の機能説明をするだけではなく、配信者自身の生活や考え方を語り、消費者との共通点を見出してもらうことが信頼形成につながります。
価値観が似ていると思ってもらえると、商品の品質や適合性に対する不安が軽減することも分かっています。
3.プラットフォームの特性と自社ブランドの適合
ライブコマースを行うプラットフォームの選択も戦略的に検討すべきです。研究では、タオバオなどのeコマース内蔵型プラットフォームと、Douyinのようなライブ配信主体型のプラットフォームでは、売れやすい傾向に差があることが分かっています。
前者は商品紹介が求められやすく、後者は配信者と消費者の関係構築が求められやすい傾向があります。自社ブランドの売りが何かによって選定が変わってくるでしょう。
ライブコマースは市場調査の機会でもある
ライブコマースがもたらす価値は、売上向上やマーケティング手法の革新だけにとどまりません。
実は、ライブ配信という双方向の接点を通じて、企業はこれまで見えづらかった顧客の生の声や悩みをリアルタイムで把握できるようになります。
例えば、配信中に寄せられるコメントや質問内容を分析すれば、商品開発における潜在ニーズの発掘や、販売後のカスタマーサクセス施策の改善にも活かせます。
つまりライブコマースとは、購買率向上のための仕組みであると同時に、顧客インサイトを継続的に収集する市場調査の機会でもあるのです。
こうした消費者データの分析をマーケティングや経営戦略に結びつけられる企業こそが、持続的な競争優位を築いていけるといえます。
参考文献:Benjiang Lu, Zhenjiao Chen. (2021). Live streaming commerce and consumers’ purchase intention: An uncertainty reduction perspective.
